ねんざ・骨折・脱臼を外部から見分けるのは難しいものです。ことに、症状を的確に伝えられない子供や骨がもろくなって骨折しやすい高齢者の場合は、慎重に対処しなくてはなりません。とりあえず患部を動かさないように注意して冷やし、早めに専門医の診察を受けることが大切です。
●ねんざ
転んで足首をひねったり、手をついたりしたときによく起こります。ねんざというのは、関節包(関節を包んでいる袋)や関節の周囲の靭帯が損傷した状態で、単に靭帯が伸びただけのものから完全に切れてしまったものまで、程度はさまざまです。
軽い、重いの判断はなかなか難しいのですが、痛みや腫れがそれほどひどくなく、一晩たって症状が軽減しているようなら軽いねんざと考えていいでしょう。その場合は家庭での手当てで間に合います。
手当ての基本は、冷やすことと患部を動かさないこと。患部を少し高くすると腫れを少なくすることができます。足首のねんざなら、足を座ぶとんや枕などの上にのせ、氷のうで冷やすか冷湿布剤をはります。腫れがひくまで、2〜3日は冷やしてください。この間は入浴などは控えます。 痛みや腫れがいつまでも続く場合は骨折の疑いがありますから、医師の診察を受けたほうがいいでしょう。
●突き指
突き指は、指の関節のねんざといえます。やはり患部を冷やし、副木を当ててなるべく動かさないようにするのが正しい手当ての方法です。突き指をしたとき、よく指を引っ張ったりもんだりする方がいますが、かえって損傷をひどくしてしまいます。
指を曲げ伸ばしできるようなら心配ありませんが、指が曲がったまま伸びない、あるいは指が動かないといった場合は、骨折や脱臼、腱損傷、靭帯損傷の可能性がありますから医師の診察を受けた方がいいでしょう。
●骨折
ねんざだと思って安心していたら骨折だったというケースがよく見られます。一般的に骨折の場合は受傷直後から激しい痛みがあり、腫れや皮下出血を伴いますが、部位や程度によってはそうした症状が出にくい場合もあり、骨折に気付かずに放置して悪化させてしまうことが少なくありません。特に子供や高齢者の場合は注意が必要です。子供はただ泣くだけで、どこが痛むのかさえ分からないことがありますし、高齢者の場合は「まさか」と思うくらいのささいなけがでも骨折することがあるからです。
骨折は部位や程度、年齢などによって治療法が変ってきます。正確に診断した上で、すみやかに適切な治療を行うことが必要なので、受傷の状況や時間経過などの情報を医師に詳しく伝えるようにしてください。たとえば、転んだのか、高い所から落ちたのか、最初から痛みがひどかったのか、徐々に痛みがひどくなったのかといったことが分かると、診断の大きな助けになります。
子供に多いのは、鎖骨、手首、肘の骨折です。抱きあげたときに痛がって泣くようなら鎖骨が折れている可能性があり、手をついて前のめりに転んだときには手首の骨折を起こすことが多いものです。また、肘を痛がるときは要注意。肘の周囲には血管や神経が集まっており、これらの損傷を伴うこともあるので、すぐ専門医にかかるようにすべきです。
高齢者では、股のつけ根(股関節)、手首(手関節)、肩のつけ根(上腕骨近位)、背骨(脊椎)などの骨折が多く見られます。分かりにくいのは股関節や背骨の骨折です。お年寄りが転倒して起き上がれないようなときには一応、股関節や背骨の骨折を疑ってみたほうがいいでしょう。お尻のあたりを痛がって膝も動かせない、あるいは痛がる側の足が短くなっているような場合は、まず股関節の骨折があると考えて間違いありません。背骨の骨折は、身動きもできないほど痛がるものから、本人も気付かない程度のものまでさまざまです。
これらの骨折では腫れや皮下出血がすぐに出てこないことがあり、また受傷の状況からして、「これくらいで骨折するはずがない」と判断しがちです。そこで、無理に起こそうとしたり、家でしばらく寝かせておくということになるわけですが、これが治療に悪影響を及ぼします。高齢者の場合はすみやかに手術してリハビリを行い、早く元の生活に戻してあげることが大切です。骨折が原因で寝たきりになるケースが増えています。
骨折の応急処置は、基本的にはねんざの場合と同様です。手当てのポイントは患部を動かさないこと。動かすと、折れた骨が動いて周囲の血管や神経などを傷つけてしまいます。患部が動かないように固定するには、患部の上下の二関節をまたいで副木を当て、軽く縛ります。副木がない場合は、杖、傘、スキーの板、物差し、新聞紙、雑誌、座ぶとんなどでも代用できます。患部が動かないようにすればよいので、臨機応変に対処してください。腕の場合は固定してから三角布で吊ります。衣服の胸元のボタンをはずし、そこに手を入れてもいいでしょう。
外傷があって骨が外から見える開放性骨折(複雑骨折)の場合は、患部を消毒し、清潔なガーゼなどを厚めに当ててから固定し、すぐ病院に運びます。細菌感染の恐れがあるので一刻も早い手当てが必要です。
●脱臼
関節がはずれた状態で、肩、指、あご、肘などによく起こります。脱臼は素人でも整復(元に戻すこと)できないことはありませんが、戻す際に周囲の血管や神経を損傷してしまうことがあるので、専門医にまかせたほうが無難です。応急処置としては患部を冷湿布し、なるべく動かさないようにします。
整復した後も、医師に指示された期間はできるだけ患部を動かさないように注意してください。治りきらないうちに無理をすると脱臼が習慣性になり、何度も繰り返すと手術が必要になる場合もあります。
子供では、肘内障がよく見られます。俗に「手が抜けた」「肘が抜けた」といわれるもので、厳密には脱臼ではなく、肘の骨についている靭帯(輪状靭帯)から骨がはずれかかっている状態です。子供の手を強く引っ張ったら泣き出して、腕を挙げなくなったようなときは肘内障の可能性が高いといえます。専門医であれば簡単に元に戻せるもので心配はいりませんし、何度か経験して慣れた親御さんの中には見様見真似で治そうとする方もいます。しかし、原因がはっきりしていない場合は骨折の可能性もありますから、やはり専門医にかかるほうが安心です。 |