たばこを吸うことによる健康影響には、煙が直接触れるくちやのど、肺以外にも多くのものが知られています。しかしスイッチのON/OFFのような直接的な因果関係でないためなじみにくいですが、ヒトでの観察研究などによる総合的な判断によって、がん、循環器、呼吸器、妊娠への影響といった広範な健康影響が喫煙により引き起こされることが知られています。
たばこを吸うことによって引き起こされる健康影響としては、煙が直接接触するくちやのど、肺だけでなく、食道や胃さらには妊婦さんのおなかの中の赤ちゃんにまで影響が及ぶことが明らかとなっています。
たばこを吸うことによる健康影響について、まずその背景の考え方を整理しましょう。私たちは、「スイッチを入れれば/切れば、電気がつく/きえる」といった、直接的に結びつきのある原因とそれに引き続く結果、の考え方に慣れています。
一方で、喫煙による健康影響のうち最も知られているものに肺がんがありますが、たばこを吸った直後に肺がんになるわけではなく数十年くらい先に影響が表れることや、またがんになった後で、そのがんがたばこのせいだったのかどうかを判断することはほぼ不可能であることなどから、喫煙が原因で病気になる、という考え方にはなじみにくいことがあるようです。
また、薬の効果や量などを確認するためヒトでの研究である臨床試験で、薬と偽薬を用いた比較が行われますが、たばこの場合にはこうした臨床試験を行うことは技術的にも、また倫理的にも難しいものです。
よって、喫煙の健康影響については、細胞や動物を用いた実験による研究に加え、ヒトでの「観察研究」、つまりたばこを吸っている人々とそうでない人々とが、その後どうなるのか、ということを調査する、という研究方法によることになります。
喫煙の健康影響ほど、ヒトでの観察研究がなされているものは他にはない、といってもいいくらい古くから研究がなされています。一つ一つの研究のみでなく、たくさんの研究結果を集めて選び総合的に判断する、という総括報告(レビュー)という評価も数多くなされています。特に研究成果については、資金源、研究の背景、などについても検討した上で、質の高い研究結果のみを採択して判断するなど、一定の手続きに従って総括報告を行う、系統的総括(システマティック・レビュー)という手法も用いられるようになっています。
今日では、アメリカをはじめ国際的にも数多くの総括報告が発行され、そこでは喫煙の健康影響が改めて確認され強調されているところですが、その中では口腔、喉頭、気管・気管支・肺、咽頭、食道、胃、肝臓、膵臓などのがんをはじめ、動脈硬化、大動脈瘤、脳卒中、虚血性心疾患といった循環器疾患、喘息発作、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患といった呼吸器疾患、早産、死産、低出生体重など妊娠への影響について、喫煙によって引き起こされると判断されています。受動喫煙についても、肺がん、妊娠や小児の発育への影響が引き起こされると判断されています。 |